タンポポの染色体は８本が基本で、有性生殖をする２倍体のカンサイタンポポは2n=2X=16本の染色体を持っています。
（２倍体のカントウタンポポ染色体：「日本産２倍体タンポポの核型分析」山口聡、染色体Ⅱ-45-44(1986)より引用。）
以上の事実に基づき、
白花系タンポポの遺伝様式とメカニズムについて考察してみました。
基本になる１組８本のうちのどれか１本の染色体に花弁の発色に関わる遺伝子が乗っているわけですから、カンサイタンポポはそれを２組もっていることになります。白色形質は優勢遺伝するという仮定に基づけば、カンサイタンポポは２組とも黄色形質の遺伝子です。減数分裂で花粉には黄色形質の１組が存在します。
卵細胞を提供する母親であるケイリンシロタンポポは４倍体（2n=4X=32)で32本の染色体があり、発色に関わる染色体は４組持っていると考えられます。そのうちの少なくとも１本が白色にする遺伝子を持っていると考えられるわけです。
タンポポの花色が白色になるメカニズムについては未だ明らかにされてはいないのですが、ここでは花弁の黄色色素を分解するカロチノイド分解酵素（CCD）によって白くなるという仮説に基づいて、染色体のどれか一本に白色にする遺伝子（＝CCDを合成する遺伝子）があると仮定しております。
（４組のすべてが白色という可能性もありますが、後述する理由により多くても３組です）
遺伝子マーカーによる分析によると、ケイリンシロタンポポ自身も３倍体のモウコタンポポと朝鮮半島系の２倍体タンポポの雑種と推定されていますので、白花形質の遺伝子はそのどちらかから由来していることになります。
完全な白花ではないものの薄黄色のタンポポである４倍体のキビシロタンポポも３倍体のモウコタンポポと２倍体タンポポの雑種ということですから、白花形質の遺伝子はモウコタンポポから来ていると考えるのが合理的な気がします。
白花系タンポポの祖先となったモウコタンポポは少なくとも１組、（最大３組）のCCD遺伝子を持っていたのですから、当然花色は白色だったはずです。Flora of Chinaではモウコタンポポの花弁の色について「Ligules light yellow, yellow, or rarely white（淡黄色、黄色、稀に白色）」との記載がありました。
キビシロタンポポがわずかに黄色を帯びている理由として、
「CCD遺伝子がキビシロタンポポには１組、シロバナタンポポは２組あって、シロバナタンポポはCCD遺伝子が多い分だけ、CCD(カロチノイド分解酵素）の生産量が多いので、花弁のカロチノイド色素を完全に分解して純白、キビシロタンポポはCCDが少ないので、完全には花弁の色素を分解できない」
という仮説も考えてみたのですが、遺伝子の量とその生産物の量が比例するかどうかについては文献的根拠を見つけていません。
シロバナタンポポをはじめとする白花系、ウスギ系タンポポの花弁が白くなっている理由としてカロチノイド分解酵素（CCD）というものを仮定して、その遺伝様式までデッチあげてみました。
まったくの空想なわけですが、「CCDが花弁のカロチノイド色素を分解して白くなる」というメカニズムを仮定すると、白花と黄花の雑種であるシロバナタンポポの花弁が白くなることや、一部や全部が黄色い花弁のシロバナタンポポができること。シロバナタンポポやケイリンシロタンポポ、キビシロタンポポに至る過程を都合良く説明できると思っています。
★ご注意★
この項はブログ主がシロバナタンポポの起源を考えているうちに思いついた仮説（妄想）でしかありません。文献資料を元にしてはおりますが、概念図も含めて簡単に信じて拡散しないようにお願いいたします。
