
しかしその一方で、キバナシロタンポポが集団で自生しているところが高知や九州、松江などで確認されており、キバナシロタンポポはシロバナタンポポとは別種ではないかという考え方も出てきています。
前出の森田龍義先生も、黄花のシロバナタンポポ集団はケイリンシロタンポポ(T.coreanum)かもしれないとの考え方を表明しておられます。
ケイリンシロタンポポは韓国を中心として分布する白花のタンポポで、日本にも北九州を中心として白花のクローン(ツクシシロタンポポ)がありますが、森田先生によればケイリンシロタンポポには30以上のクローンがあり黄色いクローンも多いとのことです。
そこでこの黄花のタンポポがケイリンシロタンポポの一種なのかを調べる決め手は染色体数です。
タンポポの染色体は8の倍数が基本で、シロバナタンポポは染色体数40本の5倍体ですが、ケイリンシロタンポポは染色体数32本の4倍体です。

(秋鹿町産シロバナの染色体:1000倍視野で撮影したものをトリミング)
そこで私は松江のキバナシロタンポポ集団の染色体分析を考えているところです。
染色体分析をするためには根を掘り出して伏せ植えし、新しく生えたひげ根の先端を切り取って顕微鏡で観察しなければなりません。
しかし松江市内でのキバナシロタンポポ集団は工事で整地されてしまい、現在はわずか3株しか残っていませんので掘り返すわけにはいきません。今回は種子を採集して、その発芽した種子の根を使って染色体分析を試みます。
今日ようやく種子を採集できました。3株有るうちの一番東側の株(2013Aと仮称)から一花分です。

とは言え、在来種の種子からの発芽は発芽率が低いのでなかなか大変そうです。外来種だと、濡らしたペーパータオルの上に種をバラまいておくと3日程度で発芽するのですが、在来種は温度条件が厳しく、発芽率も低いようです。
色々調べてみたところ、農業環境技術研究所の芝池博幸氏の研究で、シロバナタンポポの種子は10℃から25℃の条件で最終的に7割くらいが発芽しています。ただし、40ワットの昼光色蛍光灯で光をずっとあて続けていたようです。
(Hoya, A., H. Shibaike, T. Morita and M., Ito (2007) Germination characteristics of native Japanese dandelion autopolyploids and their putative diploid parent species. Journal of Plant Research, 120, 139-147)
温度はともかく、光を当て続ける方法を考えないといけません。