
(黄色い花をつけているシロバナタンポポ:2005年5月/出雲国庁)
その理由を調べていると、キクの白花品種についての研究報告に、「白花品種は黄色色素のカロチノイドを作る能力が無いから白いのではなくて、生産したカロチノイドを分解するカロチノイド分解酵素(CCD:carotenoid cleavage dioxygenase)が働いているために白い」ということが書いてありました。
そこでシロバナタンポポもキク科だから、同じようにカロチノイド分解酵素が働いているために白くなっているのかもしれないと考えて、それを証明する実験をやってみました。
タンポポの花弁には水溶性の色素(赤)と水には溶けないがアルコールのような有機溶媒に溶ける脂溶性色素(黄色)がある。(実験1、実験2)

タンポポからアルコールで抽出された黄色い色素はシロバナタンポポの花弁の絞り汁(花弁抽出液)に漬けると薄くなった。(実験2)

シロバナタンポポ以外の白花系タンポポの花弁にも黄色い色素を薄くする働きがあった。(実験3:緋紅蒲公英、実験5:キビシロタンポポ)、キビシロタンポポとシロバナタンポポでは薄くする力に大きな違いはなかった。
キバナシロタンポポを含む黄色種のタンポポ(セイヨウタンポポ、カンサイタンポポ)では、黄色い色素を薄くする力はほとんど無かった。(実験3)

W:対照の蒸留水(D.W.)
A:シロバナタンポポ(Taraxacum albidum)
O:セイヨウタンポポ(T.officinale)
J:カンサイタンポポ(T.japonicum)
S;キバナシロタンポポ(T.albidum var.sulfureum)
R:緋紅蒲公英(T.pseudoroseum)
シロバナタンポポの絞り汁に漬けた黄色いカンサイタンポポの花弁を顕微鏡で観察すると、黄色が薄くなり、黄色い色素の粒が点在していた。(実験4)

酵素はタンパク質のため、加熱によって作用が失われる。シロバナタンポポの絞り汁を加熱すると黄色色素を薄くする力は弱くなったことから、色素を薄くする働きは酵素だと思われる。2週間冷蔵しても弱くなった。(実験6)
まとめ
シロバナタンポポの花弁には、黄色い色素を薄くする作用があり、その作用は加熱によって失われることから、酵素である可能性が高い。このことから、シロバナタンポポにもキクと同じようにカロチノイド分解酵素が有ると思われます。