今回の実験は、白花種の中で少し黄色味が残るウスギタンポポ系のカロチノイド分解酵素について調べました。安来市内フィールド調査で大量にキビシロタンポポ(Taraxacum hideoi)の花弁を採集しましたので、これを実験材料にしました。

(キビシロタンポポの花:安来市伯太町日次)
ウスギタンポポ系の花弁は白色から薄黄色をしているので、シロバナタンポポに比べてカロチノイド分解酵素の働きが弱いのではないかと考えて、シロバナタンポポとウスギ系タンポポでどの程度カロチノイド分解能力に差があるのかを調べるのが目的です。
実験に使ったのはキビシロタンポポの他に、白花のシロバナタンポポ(T.albidum)、黄花の外来種アカミタンポポ(T.laevigatum)です。
今までの実験と同じく、頭花を水洗いして汚れと花粉を洗い流して、花弁のみを精製水に漬け、その上澄み(抽出液)を実験に使いました。

上澄みの色はほぼ透明ですが、アカミタンポポは水溶性のアントシアニンを花弁に持っていると思われるため、薄いピンク色です。
実験に使う黄色色素はアカミタンポポの水洗いした花弁のみを100%エチルアルコールで抽出し、それを濾紙に染み込ませた上でアルコールを蒸発させたものを使いました。同じ大きさの短冊形に切り、それぞれの抽出液に入れます。

ちなみに、キビシロタンポポの薄黄色は脂溶性のカロチノイドかどうかを調べるために、水で抽出したあとの花弁を今度はアルコールに漬けて色素を抽出してみました。

キビシロの方が微妙に黄色がかっているようにも見えますが、はっきりとした差ではありません。実際シロバナタンポポとキビシロタンポポの花弁の色の差も良く見なければわからないレベルではあります。
さて、本題の実験の方ですが、25℃で二日おいてどの程度黄色が抜けたかを調べました。

結果はご覧の通り、どの短冊も色が抜けていません。
失 敗 です。orz
花弁抽出液を作るのに、花弁をすりつぶさず原型のままで精製水に漬けたために、酵素がきちんと溶けださなかったのか、または腐敗と劣化を防ごうとして実験開始まで2日間冷蔵庫で保管したために却って酵素が劣化したのかもしれません。
改めてキビシロタンポポの花弁を採集に出かけて再挑戦いたします。(2011/5/12追記)

前回の失敗を受けて、今回はきちんと花弁を押しつぶしてから精製水で抽出したものを使いました。(5/14-16)
シロバナとキビシロで黄色の分解能力に差はないように見えます。むしろキビシロの方が薄くなっているようにも見えました。シロバナの抽出液は作ってから1日経ったものを使用したためかもしれません。
このブログで紹介した「カロチノイド分解酵素の証明実験」その1から6は、かなり大雑把なものです。
厳密にシロバナとキビシロのカロチノイド分解酵素の活性(分解能力)の差を見るためには、抽出材料にする花弁の量(重量)と分解するカロチノイドの量(濾紙の面積)を同じにしてから、抽出液を反応させて残った色素を同じ量のアルコールで抽出します。そして分光光度計を使って黄色の濃度の差をきちんと定量する必要があります。
そこまでやるとすでに趣味の実験の域を超えて本業になってしまいます(^^;)
とりあえず今回の実験ではシロバナタンポポとキビシロタンポポの花弁が黄色色素を分解する能力には大きな差がないことがわかりました。それでは、どうしてシロバナタンポポは花弁の色が純白で、キビシロタンポポなどウスギ系タンポポの色は黄色が残っているのでしょうか?
今後の研究課題といたします。
次回の実験は花弁を分解する酵素が加熱処理で分解能力が無くなるかを調べます。
タグ:カロチノイド分解酵素