安来市清水寺。
タンポポ調査の報告データを元に、雲樹寺から清水寺へむかう道路沿いに自生地を発見。

これが昨年新たに発見された場所だと思われます。キビシロは高原地帯の標高の高い所に有るというイメージが有りましたが、このタンポポは平地に近いところにありました。安来の市街地や中海からほんの3km内陸に入ったあたりです。

総苞外片は薄緑色で密着し、辺縁が赤紫色。角状突起は目立ちません。よくみると花弁全体が薄いクリーム色です。
日本植物誌DB(Frola of Japan)より、キビシロタンポポの項を一部引用します。
葉は明るい緑色、倒披針形から長披針形 花期は4月から5月。花径は直径3.5-4cm、小花数は100-120個。総苞は緑色から淡緑色、花時に15-19mm。外総苞片は密着し、総苞の1/2の長さ、しばしば膜様。辺縁は繊毛あり、紫色を帯びる。角状突起は0.5mm。外総苞辺は披針形から長卵形、長さ6.5-8.5mm、幅3.5-4.5mm。花弁は白または淡黄色。 分布:本州西部(岡山県および近隣の地域)および北九州 |
伯太町井尻の伯太川河川敷で白いタンポポを見つけましたが、こちらはシロバナタンポポ(T.albidum)のようです。


総苞外片が少し反転し、大型の角状突起があります。
さっきのシロバナタンポポから伯太川に沿って南西に1キロほど上流へいったところでキビシロを発見。
安来市伯太町日次(ひなみ)から北の前にかけて農道沿いに1km自生。ここは昨年の調査でキビシロを確認していました。


左側の花をよく見ると、花弁の先端が赤紫色に着色しています。これで更に赤色色素が増えれば緋紅蒲公英になりそうです。


種(痩果)の色は濃褐色で、ほとんど黒に見えます。また、シロバナタンポポに比べてかなり濃くて、細長いのが特徴です。しかし、キビシロにも薄い色が有るので、これだけで判断は困難です。
下十年畑
キビシロのあった集落から川上へ7kmの集落で、昨年までの調査ではシロバナと判定していたのですが、改めて詳細に調査しました。

国道から少し入った位置で見つけたこのタンポポは、葉の形や総苞外片の反転、大きな角状突起から、シロバナタンポポと判定しました。
さらに集落内を川上方面へ南下して、キビシロタンポポを発見。

一方、草丈が高く角状突起も大型のため、シロバナと判断したものの、総苞外片の反転が少なく、外片周囲が紫がかっているなど、キビシロとも思えるものがあり、染色体で判断するために2株ほど根を採集して持ち帰りました。 染色体数が40本なら5倍体のシロバナ、32本なら4倍体のキビシロと判定できます。

花茎が長く立ち上がり、葉も斜めに立ち上がっているところなどは、シロバナタンポポの特徴です。


左側は文句無くシロバナですが、右は外片の反転が少なく、シロバナかキビシロかちょっと判断に苦しみます。

種(痩果)の色もシロバナにしては濃いですが、少し幅の広い形はシロバナの特徴とも言えます。
上十年畑
下十年畑からこの上十年畑までの道路沿い集落内にもシロバナタンポポが自生していました。ここから更に川沿いに鳥取県境方面に5km南へ国道を上るとまたキビシロタンポポの自生地がありますが、この上十年畑地区ではキビシロは見つかりませんでした。

今回の調査と今まで報告された島根県内のキビシロタンポポ自生地は伯太川の流域に沿っていることがわかります。今後も他の自生地を探してみる必要がありますが、この一連のキビシロ集団は山陽側の分布域から山を越えて川沿いに北上して来たのではないでしょうか。