今回は、他のタンポポの花弁の絞り汁でも黄色い色素を分解することができるかどうかを調べました。実験に使ったのは、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポ、カンサイタンポポと、シロバナタンポポの黄色変種のキバナシロタンポポ、ピンク色の花弁をもつ緋紅蒲公英の5種類です。

画像の上段左がカンサイタンポポ、上段右がセイヨウタンポポ、下段左がキバナシロタンポポ、中央がシロバナタンポポ、右が緋紅蒲公英です。
それぞれの花弁を水洗いして花粉や汚れを洗い落とし、花弁だけを蒸留水に入れてスポイトの先端で花弁を押しつぶします。よく混ぜた後沈殿させて上澄み(花弁抽出液)を実験に使います。
前回と同じくセイヨウタンポポの花弁からアルコール抽出した黄色い色素をろ紙に染み込ませて、乾燥させます。それを同じ大きさの短冊形に切り、5種類の花弁の抽出液に浸して一昼夜置きます。

(一昼夜漬けた状態です。タンポポの種類によって花弁抽出液にそれぞれの色がついています)

一昼夜花弁抽出液に漬けたあと、半日蒸留水にひたして水溶性の成分を洗い流しました。
W:対照の蒸留水(D.W.)
A:シロバナタンポポ(Taraxacum albidum)
O:セイヨウタンポポ(T.officinale)
J:カンサイタンポポ(T.japonicum)
S;キバナシロタンポポ(T.albidum var.sulfureum)
R:緋紅蒲公英(T.pseudoroseum)
左が対照として蒸留水に漬けておいたもの(W)です。一見大きな違いは見られません。シロバナタンポポ(A)は対照に比べて薄くなっていますが、セイヨウタンポポ(O)も同じぐらいの薄さで、その他も似たり寄ったりです。強いて言えばシロバナタンポポと緋紅蒲公英(R)が少し薄い様に感じますが、先入観でそう見えているのかもしれません。
今回の実験のポイントは、シロバナタンポポの花弁に黄色色素のカロチノイドを分解する酵素があるらしいことがわかったので、他の種類のタンポポには同じ酵素があるのか?ということです。
黄花種のタンポポにはカロチノイド分解酵素は無くて黄色は薄くならず、白花系のシロバナタンポポと緋紅蒲公英は薄くなると予想していました。またシロバナタンポポの黄花変種であるキバナシロタンポポは、カロチノイド分解酵素が欠損してるか、阻害されていると考えられるため、薄くならないはずでした。

並べて拡大して、色の違いを詳しく見てみました。
シロバナタンポポ(A)が対照(W)に比べて一番薄くなっているのでカロチノイド分解酵素があることが推測されます。セイヨウタンポポ(O)もシロバナほどではないですが、対照に比べて薄くなっています。カンサイタンポポ(J)も同じでした。
このことから、セイヨウタンポポなどの黄花種にも何かしら黄色い色素を薄くするものが含まれているのかもしれません。

キバナシロタンポポ(S)も他の黄花種と同じく、シロバナ(A)ほど薄くはなりません。

ピンク色の白花系品種、緋紅蒲公英(R)はシロバナ(A)と同じ程度薄くなっています。
◯今回のまとめ
実験の目的
シロバナタンポポや他のタンポポの花弁に、黄色い色素を分解する成分があるかを調べる。
結果
白花系のシロバナタンポポと緋紅蒲公英の花弁抽出液によって黄色い色素が薄くなった。
他の黄花系のタンポポの花弁抽出液でも黄色い色素が少し薄くなった。
考察
今回の実験結果から、シロバナタンポポと緋紅蒲公英の白花系の花弁には黄色い色素を薄くする成分(カロチノイド分解酵素)が有ることが推定されます。ただし他の黄花種タンポポにも、黄色い色素を薄くする成分(カロチノイド分解酵素又は別の成分)が多少含まれてるのかもしれません。
白花系と他の黄花種との違いが余りはっきりと出ませんでした。花弁の抽出液に漬ける時間や温度、pHなどを工夫すればもう少しきれいな結果になったのかもしれません。今後の課題です。
次回は花弁そのものが脱色されるかを実験します。
カロチノイド分解酵素の証明実験その4(花弁の脱色)へ続く
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