2011年04月19日

総苞外片の長いシロバナタンポポの染色体

 シロバナタンポポ(Taraxacum albidum)を調査・観察していると、総苞外片の長いタイプを見かけます。

 新潟大学の森田教授は、朝鮮半島に分布するケイリンシロタンポポ(Taraxacum coreanum Nakai)が日本国内にも分布していることを発見しました。そして、ケイリンシロタンポポとシロバナタンポポを見分けるポイントは、総苞外片の長さと角状突起の大きさだとしています。

 しかし、シロバナタンポポの総苞外片の長さはかなり個体変異が大きく、同じ場所に自生しているタンポポでも、その総苞外片や角状突起の大きさはかなり違います。

 そこで確実に両者を区別するには染色体数を調べるより方法がありません。シロバナタンポポは染色体数40本の5倍体、ケイリンシロタンポポは染色体数32本の4倍体という違いがあります。

 松江市内でみられる総苞外片が長いタイプのシロバナタンポポについて、ケイリンシロタンポポかどうかを確認するため、今日は松江市大草町から採集した「国庁6号」と名付けたタンポポの染色体数を調べました。


koku6_11040501.jpg

 角状突起の長いシロバナタンポポの集団から掘り出して、その主根を伏せ植えしました。そして主根から新たに生えた白い根の先端を切り取ってその標本の染色体を顕微鏡で観察します。
koku6_11040504.jpg

 上の画像は植え替えて新たに伸びて開花した「国庁6号」の花です。花が一杯に開いた状態では、総苞外片が長いように見えますが実際に長さを測ってみると、総苞全体の長さの6割程度です。ケイリンシロタンポポの総苞外片の総苞に対する比率(CD値)は2/3から3/4とされていますから、ちょっと短めでした。 根の先端を8-オキシキノリンに浸し25℃で1.5時間おいた後、5℃でさらに4時間おいて染色体を凝縮させるのが正しい手順だったのですが、最初の25℃の工程をうっかりとばしてしまったため、染色体の凝縮が不十分になってしまいました。
 そのため、染色体同士が一部重なっていて本数を正確に数えられませんでしたが、34本から38本程度数えることができました。少なくとも32本以上あることは確実です。
 
Koku6_11041931.jpg
(国庁6号の染色体:1000倍油漬で撮影、トリミングして拡大)

 今回観察した「国庁6号」は32本の4倍体ではなく、40本の5倍体と考えた方がよさそうです。つまり花の形はケイリンシロタンポポに似ているものの、普通のシロバナタンポポということです。



(6/13)
 同じ場所に咲いていたシロバナタンポポで、「国庁8号」と名付けて採集した株は総苞外片と総苞の長さの比率(CD)が0.66から最大で0.74にも達して、森田教授によるケイリンシロタンポポの基準にあてはまりました。
koku8_11041306.jpg
 今度こそ、ケイリンシロタンポポかもしれないと期待していました。

 今日ようやく伏せ植えしていた主根から新鮮な根端が採集できたので、染色体の観察を試みました。
koku8_11061506.jpg
(400倍視野で撮影したものをトリミングし、拡大)

 染色体の凝縮は良好だったものの、一部は重なっていて本数を正確には数えられませんが32本よりは多く約40本ありました。これもやはり40本の5倍体(2n=5X=40)、つまりケイリンシロタンポポではなく、シロバナタンポポでした。

 今までのところ、総苞外片が長い白花のタンポポで4倍体のものは確認できていません。(2011/6/15追記)

posted by しまねこ at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 染色体の観察
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