秋のシロバナタンポポの開花シーズンとなった先月から松江市内のシロバナタンポポのいくつかの群落を廻って、頭花の形と総苞片の長さを再調査しました。
殿町、島根県庁植え込み(2010/10/24)
大庭町、大庭小学校付近(2010/11/14)


(左:殿町島根県庁、右:大庭町、大庭小付近)

(西津田町、松江地方気象台 2010/10/23撮影)
シロバナタンポポとケイリンシロタンポポの見分け方のポイントは総苞(ガクに見える部分)の長さに対する外総苞片の長さの比率なのですが、おおむねどの集団も外総苞片は総苞の2分の1程度です。
西川津町島根大学キャンパス


(左:生物資源科学部付近、右、法文学部付近、2010/11/13撮影)
大草町国庁跡、東側。
忌部大谷地区、さくら農園付近。


(左:大草町国庁遺跡、右:忌部町大谷)
玉湯町、湯町踏切付近、外総苞片は総苞の2分の1以下。
千本ダム西岸下忌部地区、開花していた個体の撮影、種子の採集。外総苞片は2分の1以下。


(左:玉湯町湯町、右:下忌部町千本ダム)
千本ダム左岸少し下流の民家石垣に咲いていた個体は外総苞片が長いように見えました。正確に計測するため頭花を採集して持ち帰りました。。

湖北薦津 開花している個体を3株ほど見つけて、写真撮影と計測。今回調べたものは、春に撮影したときより開花状態でもそれほど総苞外片は長くないように思われます。閉じた状態で再計測するため、頭花を2個採集して持ち帰りました。


(上2枚:今回観察した松江市薦津町のタンポポ:2010/11/20撮影)

(下:春に観察した松江市薦津町のタンポポ:2010/4/7撮影)
大草、千本、薦津の頭花を並べた状態で比較しましたが、3地点ともほぼ総苞の2分の1程度で、目に見える差はありません。開花状態だと、外片が反転しているため、長めに見えてしまうのかも?

実際に詳細に計測した数値から見ても大きな違いは見られません。
薦津1、総苞の長さ20mm、外総苞片の長さ10mm、幅3.5mm、小角突起1.5mm
薦津2、総苞の長さ18mm、外総苞片の長さ9mm、幅3.0mm、小角突起2.0mm
大草、総苞の長さ18mm、外総苞片の長さ9mm、幅4.0mm、小角突起2.0mm
千本、総苞の長さ19mm、外総苞片の長さ10mm、幅3.0mm、小角突起2.0mm
春に観察した薦津の個体を画像を元に計測すると
薦津(春)総苞の長さ18mm、外総苞片の長さ12mm、幅4.0mm、小角突起3.0mm
外総苞片が内総苞片を覆う比率(CD)
薦津1 0.5
薦津2 0.5
大草 0.5
千本 0.53
薦津(春)0.67
外総苞片の長さに対する幅の比率(RWL)
薦津1 0.35
薦津2 0.33
大草 0.44
千本 0.30
薦津(春) 0.33
新潟大学森田教授の「エゾタンポポにおける無融合生殖複合体の構造と形成過程」文部科学省科学研究費補助金(H10〜12年度)研究成果報告書に記載されていたシロバナタンポポ、ツクシシロタンポポ、ケイリンシロタンポポの計測値と比較してみます。
外総苞片が内総苞片を覆う比率(CD)
シロバナタンポポ 0.5-0.7
ツクシシロタンポポ 0.6-0.8
ケイリンシロタンポポ 0.6-0.7
外総苞片の長さに対する幅の比率(RWL)
シロバナタンポポ 0.35-0.6
ツクシシロタンポポ 0.2-0.4
ケイリンシロタンポポ 0.25-0.5
小角突起の大きさ(LC)
シロバナタンポポ 1-3mm
ツクシシロタンポポ 2-5mm
ケイリンシロタンポポ 1-4mm
数値は報告書に掲載されていたグラフからの読み取りなので大雑把です。ツクシシロタンポポは、森田教授がこの報告書では「ケイリンシロタンポポのクローンの1つである可能性は否定できない」としている4倍体の白花種です

森田教授の報告書中の外総苞片が内総苞片を覆う比率(CD)と外総苞片の長さに対する幅の比率(RWL)のグラフに今回調査した3地点のタンポポをプロットしてみました(赤丸)。3地点ともシロバナのグループ付近になりました。
今回の調査の結果、秋咲きのシロバナタンポポについては頭花の形に大きな差は見られず、また明らかにケイリンシロタンポポと思われる形のものはありませんでした。
しかし、今年の春に薦津や湖北で観察したシロバナの計測データをグラフにあてはめてみると(緑丸)、ケイリンシロタンポポのグループに入ります。春になってもう一度各地点のシロバナタンポポについて計測してみる必要があります。また染色体数がシロバナが5倍体で40本なのに対して、ケイリンシロは4倍体の32本という違いがありますから、各地点の染色体数の調査もしてみないといけません。
今回の調査地点