これによると森田教授は九州を中心とする94地点のシロバナタンポポと思われる330個体について9酵素14遺伝子座のアイソザイムを調べた結果、採集したシロバナタンポポには2つのクローンが存在することがわかり、従来のシロバナタンポポと異なるクローンは2n=32の4倍体だったそうです。森田教授はこれを新種ツクシシロタンポポとしました。
ネットで入手できる情報(報告概要)では、具体的な採集地点や、見分けるポイントなど詳細な内容がわかりませんでしたので、国会図書館の資料複写サービスで報告書の全文を取り寄せ、以下のことがわかりました。
このツクシシロタンポポはアイソザイム分析の結果から韓国に分布するケイリンシロタンポポと非常によく似ており、森田教授はこの報告書の総合考察で「ツクシシロタンポポ自体がケイリンシロタンポポのクローンの1つである可能性は否定できない」としています。
本題の見分け方ですが、 この報告書でケイリンシロタンポポ、ツクシシロタンポポ、シロバナタンポポの3種の頭花の各部分を計測して形態を比較しています。

以下、報告書からの引用です。
その結果、総苞に対する外総苞片の長さの比(CD)を比較すると、ツクシシロタンポポ、ケイリンシロタンポポ、シロバナタンポポの順に有意に大きかった。 シロバナタンポポの外総苞片は総苞の2分の1ほどであるのに対し、ツクシシロタンポポは約4分の3、ケイリンシロタンポポは3分の2であった。 |
このほか、シロバナタンポポの外総苞片は幅広くツクシシロは細長い、小角突起はツクシシロが大きい傾向があるが、ケイリンシロは変異が大きく、シロバナとの間に有意の差が無かったとのことでした。
これらの鑑別点からすると、今年の春に松江市の湖北地区で見かけた白花のタンポポはケイリンシロタンポポ(ツクシシロタンポポ)の特徴を持っていると言えそうです。

(上:松江市薦津町のタンポポ:2010/4/7撮影)
2010年の秋よりケイリンシロタンポポを求めて松江市内のあちこちから総苞外片の長いタイプのシロバナタンポポを採集して、その根端の細胞の染色体数を調べています。
しかし今のところ、総苞外片が内片の2/3から3/4に達するものでも染色体数40本の5倍体ばかりで、32本の4倍体のもの、つまりケイリンシロタンポポと判定できるものは見つけられていません。
シロバナタンポポの総苞外片の長さや角状突起の大きさは、同一クローンでありながら、地域や開花時期によってかなりバリエーションがあり、単純に総苞外片の長さと角状突起の大きさだけでケイリンシロタンポポと見分けるのは難しいと感じています。
(2011/6/16追記)