2010年10月14日

島根のケイリンシロタンポポ?

 今年の春に西日本たんぽぽ調査2010で、少し気になるタイプのシロバナタンポポTaraxacum albidum)がありました。

 通常のシロバナタンポポに比べて花がやや大きめで、総苞の外片が長くて角状突起も長いのです。
komotu10040618.jpg
(上:松江市薦津町のタンポポ:2010/4/7撮影)
(下:通常のシロバナタンポポ 松江市玉湯町:2003/4/30撮影)

 これはもしかしてケイリンシロタンポポ(鶏林白蒲公英★注:ケイリンの「鶏」は正しくは旁の鳥が隹です。)別名チョウセンシロタンポポT.coreanum NAKAI かも知れないと、少し詳しく調べて見ることにしました。 ケイリンシロタンポポは中国、朝鮮半島に分布する白花種のタンポポですが、新潟大学の森田教授は九州地方のシロバナタンポポには4倍体5倍体の2種類があり、そのうちの4倍体はケイリンシロタンポポであることを発見しました。(1997)

 九州地方だけでなく、他の地方にもケイリンシロタンポポが分布している可能性もあります。

 ところが、ケイリンシロタンポポとシロバナタンポポを見分けるための資料が見つかりません。

 ケイリンタンポポについて韓国のKPNIには
「頭花は30-35mm。総苞は鐘型。外片は卵形から卵状被針形で辺縁に繊毛、先端の背面に小角。内片は錐状から線状披針形..」

 また中国の「植物通」では、
「頭花は直径35mm。総苞は鐘型で15mm、外片は卵形から卵状披針形、先端に角状突起があり、紅紫色を帯びる。片縁にまばらな繊毛。内片は線状披針形、先端は暗紫色、肥厚するか小角状突起がある。..」

 というような記載がありますが、これではシロバナタンポポでも当てはまりそうです。

 ネットで検索してみると、ねこまんまの自然観察記というサイトで、新潟大学の森田教授の話ということで、
「こちらのシロバナタンポポにも2種類あることがわかりました。(中略)ケイリンは外総苞片が長く(総苞の1/2以上)、角状突起が鋭くとがり、花もシロバナより大きいのが特徴だそうです。」
という文章がありました。

 これからすると、今回のタンポポはケイリンシロタンポポの可能性があります。

 あらためて今年の春のタンポポ調査の時に撮ったシロバナタンポポの写真を検討してみると、総苞外片が長くて角状突起の大きいものが見つかりました。松江市の湖北地区あたりでこのような形のシロバナタンポポがが目立ちます。そのほかの松江市南部、東部方面ではそういうタイプは少ないように思えます。

 染色体を調べるために問題のタンポポの標本を手に入れる必要があります。現在はまだ花が咲いていなかったのですが、春に花が咲いていたあたりへ出かけて2株ほど採集してきました。
komodu10101804.jpg
まずは主根をシャーレで培養して新しい根を発根させて染色体を調べてみるつもりです。染色体数がシロバナの2n=5x=40本でなく、2n=4x=32だったらケイリンシロタンポポだとする根拠になります。


 資料を色々調べてみると、新潟大学森田教授の「エゾタンポポにおける無融合生殖複合体の構造と形成過程」という報告書によると、調査のためシロバナタンポポとして採集されたタンポポのうち、4倍体でツクシシロタンポポ(ケイリンシロタンポポ)と判定されたものが北九州だけでなく島根県江津市からも採集されています。江津市から100Kmほど東のこの辺りにもケイリンシロタンポポがある可能性があります。(2010/11/3追記)
posted by しまねこ at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | シロバナタンポポ
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