まずは参考書の「タンポポの観察と実験」をもとに、必要な試薬を買い集めて外来種タンポポの染色体からトライしました。
この時期でも種子を手に入れやすく、夏でも発芽する外来種タンポポ(3倍体:染色体数24本)の種子をガーゼを敷いたシャーレに並べ、乾かないように時々水を補給しながら野外へ放置。一週間くらいで緑色の双葉と根が出てきました。

この根っこを双葉ごと固定(アルコールなどで蛋白を変成させて、腐ったり形が変わったりしないようにする)してアルコールで保存しました。
その後、薄い塩酸溶液に数分漬けて、細胞をバラバラにします。
水洗いしてから、スライドグラスに載せ酢酸オルセイン液で染色体を染め、カバーグラスをかぶせてから指で押しつぶして観察です。

今まで10本くらい標本を作ってようやく染色体らしきものを見る事ができました(1000倍)。細胞の中央部の薄ピンク色の部分を挟んで、紫色の棒状のものが左右に分かれて見えます。染色体が両極に引かれていく途中のようです。
本来なら、中央部にX型の染色体が並んで見える状態がベストなのです。少し遅かったようです。根がでてから、一日のうちどの時間帯で固定したら染色体がよく見えるかを研究する必要がありそうです。
以下は、今回の染色体観察の細かい手順です。興味のある方のみご覧ください。
1)キノリン処理(0.002モル濃度の8-ヒドロキシキノリンに3時間程度漬ける)
キノリンは紡錘糸の形成を阻害したり、染色体を萎縮させる働きがあるので、観察しやすくする為の前処理。染色体数を数えやすくなる反面、核型の観察がしにくくなる。省略しても良いらしい。
※0.002モル8-ヒドロキシキノリン溶液:8-ヒドロキシキノリン0.29gを1リットルの蒸留水で溶解して調製
2)固定(今回は70%アルコールを使用)と保存
タンパク質を変成させて腐敗などを防ぎ、長期間の保存ができる。固定はファーマー液(エチルアルコールと酢酸を3:1で混合)でも良い。長期の保存には70%アルコールが適しているそうです。
3)解離(60度に加温した1規定濃度の塩酸に数分間漬ける)
細胞同士の結合を弱くして細胞をバラバラにして、観察しやすくする。
4)染色(酢酸オルセインで染色体のみを染める)
解離した根の先端をスライドグラスにのせ、酢酸オルセインを数滴落として数分間染色したあと、気泡が入らないようにカバーグラスをかぶせ、指先やピンセットの先でおしつぶす。(カバーグラスを割らない程度に)。「カバーグラスがずれないように鉛筆の尻などで叩いて細胞を散らす」と本には書いてあります。
5)顕微鏡で観察。
根の先端付近の正方形に近い形の細胞を探し、分裂期で染色体が出現している細胞を探す。観察には1000倍程度の倍率が必要なので、油漬(スライドグラスと対物レンズの間にイマージョンオイルをつけて解像度を上げる)で観察しました。
※染色に使った酢酸オルセイン液を最初は粉末を酢酸で溶かして自作しましたがほとんど染まらず失敗。ネットで既製品を購入して使ったらあっさりと染まりました。やはり、いい加減な製法では駄目ですね。
3倍体の外来種タンポポで技術を磨いて、染色体数を確実に数えられるようになったら、今まで観察してきたタンポポたちの染色体数を調べてみようと思っています。
まず、染色体数がネットの文献ではわからなかった緋紅蒲公英の染色体数(おそらく4倍体と思われるのですが)を調べる。
それから松江市北部にみられる総苞外片の長いタイプのシロバナタンポポの染色体数を調べる事。これが40本の5倍体でなく、32本の4倍体だったら、ケイリンシロタンポポ(T.coreanum)の可能性があります。
もうひとつは、黄花のシロバナタンポポの染色体数が通常のシロバナタンポポの染色体数と同じかどうか、つまり花の色を決める遺伝子が染色体レベルで欠損しているかどうかを調べたいと思います。
私はシダに興味を持っています。ぜひ自分の手で染色体数を調べたいと思い探しました。札幌では調べてくれる所がありません。興味深く読ませてもらいました。
私も自分の手でやるしかないと思って参考書を頼りにネットで試薬などを入手してトライしました。
最近ようやくコツがつかめてきました。