
この酵素を仮定することで、白花形質が優性(顕性)遺伝することや、シロバナタンポポの黄色変種キバナシロタンポポが生じるメカニズムを合理的に説明できました。
ところがカンサイタンポポやカントウタンポポの白花変異がタンポポ調査で報告されています。
「シロバナタンポポなどの白花種だけがカロチノイド分解酵素を持っているので花弁が白い」という前提ではこの現象を説明できないのが難点でした。
色々考えて、思いついたのが「黄花種も含めてタンポポは全てカロチノイド分解酵素の遺伝子を持っている」という新たな仮説です。
(1)遺伝子として持っているが、発現していない。(ブロックされている?)
(2)シロバナタンポポでは遺伝子が発現した結果、花弁が白くなる。
(3)シロバナタンポポでは、花弁だけに発現している、(だから花粉は黄色)
(4)キバナシロタンポポは途中で遺伝子の発現が抑制される、(1/2,1/4だけ黄色いものがある)
(5)カンサイタンポポの白花変異は遺伝子が何かの理由で発現する。

とりあえず、この仮説を検証するべく資料を漁ってみようと思います。
また、タンポポ花弁の黄色色素を分解する力が、花弁の抽出液と花以外の部分からの抽出液で差があるかどうかを比較することで検証できるかもしれません。
カロチノイド色素に関する文献を調べているとキクの研究文献でかなり参考になる情報がありました(2019/12/29追記)
キクではカロチノイド(文献ではカロテノイドと記載)分解酵素の発現が舌状花特異的であるとされていました。
「キク花弁における白色形成のメカニズム」大宮あけみ、農業および園芸、第82巻、第11号(2007年)
一部抜粋
黄花系品種ではCmCCD4aの発現が抑制されているのではなく,遺伝子を持っていないことが明らかになった.
(中略)
キクにおけるCmCCD4aの発現はきわめて舌状花弁特異的であり,花器官の中でもカロテノイドを含む管状花における発現はきわめて低かった.
CmCCD4aはキクのカロチノイド分解酵素:引用者注
さらに同文献では
CmCCD4aが花弁の白色形成に関与していることは,培養変異株や突然変異株によっても確認された(大宮ら 2006).花弁にカロテノイドの蓄積が認められない野生株'94−765'の花弁にはCmCCD4aが発現していたが,培養過程で花弁にカロテノイドが蓄積するようになった変異株ではCmCCD4a遺伝子が欠失していた.キクでは枝変わりや培養変異の際に染色体が脱落することがある.CmCCD4a遺伝子はこのような染色体の脱落に伴い,欠失するのではないかと考えられる.
これと同様のことがシロバナタンポポの黄色変異で起こっていると考えてよいのではないでしょうか。
キクは白色が優性であることや,白色花弁が突然変異で黄色に変化することも分解酵素により説明がつく.野生ギクにおいてもCmCCD4a酵素の有無により白色か黄色かが決まっているようである.この花弁の白色の形成機構がキク以外の植物にもあてはまるかどうか,興味深い.カロテノイドの生合成が抑制されてカロテノイドが蓄積しない例もあるだろう.CCD遺伝子は持っているが、発現量が少なくカロテノイドが蓄積している場合もあるだろう.植物によってさまざまな作戦で花弁のカロテノイド量が調節されているのではないかと考えている.
カンサイタンポポの白花はカロチノイド生合成の抑制によるという考え方もあるかも?